大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

札幌高等裁判所 昭和37年(ネ)251号 判決 1965年2月27日

控訴人(原告)

古沢正利

右沢カメヨ

被控訴人(被告)

本別町農業委員会

代表者・会長

水元孝夫

指定代理人

佐々木兼正

外二名

被控訴人(被告)

代表者・法務大臣

高橋等

指定代理人

山本和敏

外二名

被控訴人ら補助参加人

古沢寛美

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

≪省略≫

理由

一、控訴人古沢カメヨの控訴提起について。

本件控訴状には当事者の表示として控訴人古沢正利外一名の記載され、末尾に古沢正利の署名押印がなされているのみであるから、右控訴状の記載からは一審原告古沢カメヨが控訴を提起したものであるとは到底認められない。しかしながら本件の訴は控訴人両名が本件土地を被相続人古沢義徳から相続して共有権者となり、被控訴人農業委員会に対し右土地につき定めた農地買収計画の無効確認を求めるとともに、被控訴人国に対し、買収処分の無効を前提として買収による所有権移転登記の抹消を求めるものであるから、これが必要的共同訴訟に当るならば、共同訴訟人の一人の訴訟行為は全員の利益においてのみその効力を生ずる(民事訴訟法第六二条第一項)ことから、控訴人古沢正利の控訴により共同訴訟人古沢カメヨについても判決確定の遮断および移審の効力が生じ、古沢カメヨも控訴人の地位につくことになる。

控訴人の主張によれば本件土地は分割前の相続財産であるが、相続財産の共有は民法第二四九条以下に規定する「共有」とその性質を異にするものではないと解すべきところ、共有物についての保存行為は各共有権者が単独で行ない得るところであるから、これに関する訴訟は固有必要的共同訴訟には当らないといわなければないないが、共有権者が共同訴訟人となつた場合は合一確定が要求されるから、いわゆる類似必要的共同訴訟に当るというべきである。けだし単独でも行い得る訴訟が共同で行なわれたために勝敗が区々になることは訴訟の目的に背馳することとなるからである。しかして共有物についてなされた行政処分の無効確認および不法登記抹消請求は、いずれも共有物の保存行為としての妨害排除の請求にほかならないものと解するのを相当とするから、本件は類似必要的共同訴訟に当ることとなり、訴訟の目的の合一的確定の要求は固有必要的共同訴訟におけると異ならず、共同原告の一人が上訴した場合、他の原告にも上訴の効力が生ずるわけである。従つて本件にあつては一審原告古沢カメヨも適法な控訴をなしたものとして取扱うのが相当である。≪以下省略≫(和田邦康 田中恒郎 藤原康志)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例